「学校では教えてくれない21世紀での生き方」第4回目は、株式会社ガラパゴス 代表取締役CEO 中平 健太 様、株式会社iCARE 代表取締役CEO 山田 洋太 様、株式会社ZENKIGEN 代表取締役CEO 野澤 比日樹 に登壇いただきました。
セミナーは以下の3つのテーマを中心にディスカッションしていただきました。
【ディスカッションテーマ】
1.私たちが生きる時代はどんな時代になるか
2.「大企業vsベンチャー」で語れない企業選択
3.テーマを紡ぐ力を磨く
起業家3名が、今の社会やこれからの生き方を語った1時間。
キャリアに悩む人へ新しい視点となる考え方が盛りだくさんです!
本記事は、野澤がモデレーターを務め、3名の対談形式でお届けします。
私たちが生きる時代はどんな時代になるか
AIやテクノロジーを使う事業を推進し、最前線に立つ起業家3名はこれからの時代をどのように考えているのでしょうか。
野澤:中平さんはまさにデザインとAIを掛け合わせた事業を行い、AIの社会実装という時代の最前線にいるわけですが、ここからの世の中はどうなっていくと思いますか?
中平:ここからは結構難しい時代に入ると思っています。残念な話、今後の日本の労働人口は必ず減っていきます。そうすると、個々人がどんどん頑張らなきゃいけない時代が来るはずなんですね。ただ、そこに人生の決まり切った勝ちパターンがないんですよ。となると結局、個々人が自分の人生の物語を作ってそれをしっかりと信じて生きていくしかないわけですよ。誰も決めてくれない、物語は自分で作るしかないっていうところが難しい時代だなと感じてます。
山田:私も中平さんと同じ感覚ですね、、、絶対的に勝ちパターンがない時代に入ってる。逆にいうと負けた分だけ勝てる可能性があるって意味では、負けをどれだけ良い形にできるかが大事なんじゃないかと思いますね。負けっていうのは、想定外の結果になってしまったということだと思いますが、まず試みる勇気が必要なんですよね。しかも、隣にいる人と同じことをやっていると価値は半分になる。他の人が知らないようなことをインプットし、試す。それを繰り返して、建てて壊す、みたいなことをやり続ける。これができるかどうかが大事になる時代ですし、そうやってこれからの世代には生きていってほしいと思います。
Connecting the Dots
野澤:想定外の結果といえば、人生も想定通りいかないじゃないですか。山田さんはもともと医師だったわけで、そこからすごいキャリアチェンジですよね。どういう想いで生きてきたのでしょうか?
山田:私は、目の前に起こっている出来事に対し、「自分は何をやったのか、何ができたのか」を自分ごと化するんですけど、それを繰り返してたらこんなキャリアになっていました(笑)
ただ、スタンフォード大学のクランボルツ教授がおっしゃるように、世の中のキャリアっていうのは偶然なんですよね。(※1) 計画をどれだけ立てていたって、その時々で自ずと自分が望むものにピボットしていくんです。
中平:その話は、スティーブ・ジョブズのConnecting the dots (※2)の話と繋がると思ってます。私は、もともと製造業のコンサルティング会社で死ぬほど働いてその真髄を理解したからこそ、その考えをデザインに持ち込んで今があると思っています。だから、その場その場で思いっきりやるっていうことがやっぱり大事だなと。
野澤さんもサイバーエージェントからソフトバンクにいって、まさにConnecting the dotsじゃないですか?
野澤:まさにそうですね。偶発的なキャリア形成っていうのは本当に共感するところがあるんです。その結果、お二人は可能性を最大限発揮してるわけじゃないですか。ただ、一方でそうなれてない大人も多い。ここの違いはね、「その時々、全力でやったか」に尽きると思うんですよ。その時その時に与えられた役割や自分がいるポジションで全力を出しているかどうか。ここが分かれるポイントな気がしてます。
山田:完全に同意ですね。目の前の自分の仕事や役割に120%の力を出さない人には神様ってプレゼントくれないんですよね。何か本気でやり切ってたら目の前に、「次こっち行ったらいいんじゃないですか」、「こっち興味ありませんか」って出てくるんですよね。その時にアンテナが動いて、進んで、気づいたら足跡がいっぱいできていて。そこで、点と点が繋がって線になっていく、線が集まって面になっていくってところがある気がしますよね。全力でやりきるってのがやっぱ大きいですよね。
中平:全力でやり切るのはいいんだけど、やっぱり楽しむことも超大事だと思ってます。
山田・野澤:あ〜〜〜〜〜(共感)
中平:例えば転職を繰り返してしまう人は、その場その場を楽しむコツがわかってないのかもしれないと思うんですよね。私たちはやっていることはそれぞれ全然違うけど、楽しんでるっていうのは感じますね。
野澤:その楽しいに更に付け加えたい要素が「仲間」ですね。同じゴールに向かって努力するのは、イメージで言うと甲子園を目指している高校球児みたいな感覚です。
山田:わかるなぁ。一緒に泣けるんですよ。6ヶ月に一度、合宿をやるんですけど、毎回泣いてますもんね(笑)
勝ちパターンがない時代、学校での今までの学びはどうなる?
野澤:視聴者の方から「勝ちパターンがない時代に、学校での今までの学びはどうなるんでしょうか?」と質問がきてます。ぜひおふたりにお聞きしたいです。
山田:学校の学びって基礎力なので、一般教養という観点で普通に学べばいいんじゃないかなと思ってるんですね。
でも学校だけでは学びきれないんですよ。なので自分がこういうものを知りたいな、こういうものがあったらなって見つけたものを大事にして、外に学びに行くことが重要です。
義務教育は基礎を学び、学びたい分野はオンラインなどを通し、身につけていくといいと思います。
中平:学校で学ぶことって学び方のトレーニングだと思うんですよ。人ってどんどん学びを蓄積しながら、その切り口を持ったり構造的に理解をしたりしつつ、課題解決をしていく生きものだと思います。なので、物事を学ぶ方法を学ぶ。すると、勝ちパターンがなかったとしても課題解決できる人間になれて、強く生きていけると思うんですよね。
野澤:正解ありきの世界で、正解を探してきた人たちは、その思考が染み付いちゃってるじゃないですか。今の大学生も、一定そういう思考のパターンで生きてきたと思うんです。そこはどういう風に変わっていけるのでしょうか。
山田:これまでの正解を出す考え方もあっていいと思いますし、正解のないものに対して取り組むっていう技術も必要なんですね。これらを見極めていくってことがやっぱ必要だと思います。ただそれはやってみないとわからないので、結局突入しようぜっていうところだけだと思ってます。
突入し、想定と結果との差をみて、軌道修正していく。これを繰り返しやってくことが、これからスピード感をもった様々な課題解決に繋がると思います。
中平:課題解決に当たって、問いを立てる力を訓練するといいと思います。これは、口癖を「そもそも」とかにしてみるといいんです。例えば、私の場合は「そもそもデザインとは何だろう」その逆側に「そもそもアートとは何だろう」ってある。それを考えていると、境界線が見えて、デザインというものの輪郭がわかります。
今、当たり前に世の中にあるものを「そもそも」って見るとたくさん答えられないことあるんですけど、問いを立てるトレーニングになるんじゃないかなと思います。
野澤:感嘆してました。その考え、私がいただきました(笑)
「大企業vsベンチャー」で語れない企業選択
野澤:大学生と話してると、社会に出ていく時に「大企業かベンチャーか」に関する質問されることが多いです。企業選択に関して、おふたりはどのように考えてますか?
中平:社会に出て働いている時に、愚痴をこぼしてしまう人っていうのは大体誰かに人生を委ねてる人な気がするんですよね。そうならず、自分の人生を生きるって決めた時に、胸を張って「この会社にいきます。」って言えるかどうかが大事だと思います。
ただ、「そのブランドがかっこいいから」とか「周りがかっこいいって言うから」っていう理由はやめた方がいいと思います。
野澤:全く同じ考えです!その上で、人生を選ぶっていっても、結局一つしか選べないわけじゃないですか。そしたら、選んだものを正解にする人生にしていくってことなんですよ。人に委ねちゃいけない。
山田:ですよね。私は心療内科とかでも数多くの悩み相談を聞いてきたんですけど、世の中には自ら考えて「これがしたい!」っていうものがない人もいますが、そういった方もいていいと思っています。ここで、私は一つの選択肢として、人生を委ねるとは違って、自分がどうやったらもっと今まで以上に成長できるのかっていう観点で企業選びをされるのもいいんじゃないかなと思います。そこで自分のベースの部分を磨いていけば、もしかしたらやりたいと思えることが見つかる可能性があるなと思うんです。自分の価値観や自分がやりたいことを探し続ける旅に出るみたいな感じですよね。
中平:いや〜山田さんは視野が広いなと思います。野澤さん、このテーマ「大企業vsベンチャーで語れない企業選択」の答えは何でしょう?
野澤:答えはないですね!(笑)でもやっぱり1番は自分の人生を生きることなので、自分がいいと思った道を選択するしかないと思うんですよ。だって、実際世の中どうなるかなんてわからないじゃないですか。
山田:そこでね、自分の人生を生きるっていうと、”自分らしく”って何だろうってわからなくなると思うんですよ。それで言うと、おふたりはどういう時に自分らしい人生を生きたって思います?
自分らしい人生を生きたと感じる時
野澤:いっぱいありますね。っていうのも、自分の人生を自分で決めたことがいっぱいあるから。
視聴者の方に合わせた年齢でいうと、例えば22歳の時、大学の卒業試験が終わってから世界放浪をする決断をしたんですよ。若くて感受性豊かなうちに海外に行きたい想いを消せなくて。自分で学費を払い切って、旅費を貯めて、会社に直談判して入社も10月に遅らせてもらって。初めての海外旅行だったんですけど、たまたま入ったインターネットカフェで、友達へ初めてメールを送ったんです。そしたらね、一瞬で返信が返ってきたんですよ。その瞬間「インターネットは世界を変える」と確信したんです。だからその後インターネットの業界に入ったわけなんですが、あの決断がなかったら今の自分はないし、自分らしく生きたなって感じる一つですね。
中平:私の場合は、”自分らしい”ってやっと感じられたのって、たった2年前なんですよ。自分らしくめっちゃくちゃ全開な人生送ってるとやっと思えたのが、38歳の時。
だから、学生さんには心配しないでほしい。紆余曲折があってこういう人生にきっとなっていくはずだから。
どうして今自分らしいって思えているかというと、AI・デザイン・製造業・図々しさ・頭の良さっていうそれぞれの領域で自分が100人に1人の存在って考えると、5つの領域を掛け合わせたら自分は100億人に1人の存在。とすると、AIR Designを成し遂げられる使命を持ったのは世界中で自分しかいないってわかったんですよ。100年間変わらないデザイン産業を自分が変革しないと、また100年変わらない時代が続いてしまうっていう、自分の使命感を勝手に背負ったわけです。ここに全力を尽くして生きることが自分の天命であるって思い始めてから、すごい自分らしいと思えてる。
ただ、それまでの38年間は全然もやもやしてましたよ。合ってるのかな、とか。もちろん楽しんではいたんですけどね、心の底から自分らしく生きるっていうところに辿り着いたのは、本当にここ2年ってところですね。
野澤:その場で一生懸命やって楽しんではいたけど、ようやく自分の使命・天命に気づけたってことですよね。
中平:そうです、まさに使命、天命。
野澤:人って、絶対にもって生まれた役割と使命が今世であるわけじゃないですか。私は、自分の使命を明確に自覚し、自らの仕事がその使命を果たすことに直結している状態が一番の幸せだと思っています。
中平:ただそれはそう簡単に気づけることじゃないからね。山田さんは、どういう時に自分らしい人生を生きたって思います?
山田:自分らしいって思った時か〜実は私、ずっとコンプレックスが強かったんですよ。優秀で何でもできる兄がいて、そこに劣等感を抱いてしまってたんです。それが、大学に入って家庭教師をしている時に、生徒に「先生のおかげで合格できました!」と言われて、ふと「自分は自分らしくていいんだ」と思った瞬間に全てが溶けていったんですよね。そこから「自分らしい人生を生きよう」と心に強く思えましたね。
テーマを紡ぐ力を磨く
野澤:この「テーマを紡ぐ力を磨く」っていう言葉は、中平さんからいただいたんです。
山田:いい言葉ですよね〜。ここでいう”テーマ”は何を指してるんですか?
中平:人生の生き方や物語のことです。自分はこう生きてこう死んでいく、こういう貢献をするなどは、もう誰かが書いてくれないので自分で紡いで自分で書いていくしかないんですよ。
私の話をすると、中学高校と日本で1番偏差値の高い学校にいて、超エリートコースにいたんです。ただ、そこから遊んでしまい、二浪してしまったんです。レールから外れたわけです。すると、今まで持ってたものが全部なくなったから怖いものがなくなったんですよ。
野澤:それがよかったのでは?
中平:そうなんです。この挫折があって起業したんです。なので、結果的にこの人生で良かったと思ってるんです。だからこそ、今何かで挫いちゃってる人も、それはチャンスだと思ってほしいです。そんな中で、自分の物語を紡いでいくやり方はいろいろあるんですけど、全員ができることでもないと思っているので、誰かのテーマに寄り添うのもありだと思ってます。もし今日参加してる方で、自分のいいテーマ見つかってないよって方はぜひガラパゴスにお問い合わせいただき、私がテーマを預かりますよ。テーマ探しは人生かけてやることで、テクニックとかじゃないんですよ。むしろ、自分の人生のテーマを考え続けることが大事です。
山田:私は、医師として離島にいる時、100人ぐらい看取ったんです。その時、死ぬ瞬間にその人の人生の全てが凝縮されていると感じました。印象深かった話をいうと、あるおばあちゃんの病室では昔おばあちゃんにすごくお世話になったという女性が訪れ、今回亡くなると聞いて病院まで来たと。そういう経験を通して、人のために、社会のために、結局私たちは何ができたんだろうかってことを、強く考えさせられたんです。そういうことを踏まえて、少し大きすぎるかもしれないけれど、「社会のために、自分の大切なもののために何ができますか」というところからテーマをスタートしてみてもいいかもしれないです。
最後に
山田:私たちは、自分たちの人生の中で、世の中と人と守るべきもののために何ができるかを考えて取り組んでいますし、それは自分たちの下の世代にもバトンとして繋いでいく。なので、今の学生の方々も、挑戦をたくさんして、さらに次の世代へ繋いでいくっていうことをやって欲しいです。
中平:今を生きましょう。自分の人生を生きましょう。38歳くらいで霧が晴れるはずなんで。
山田:その通り。腐ることだけはせずにね、頑張ってほしい。必ず、全て繋がっていくから。これは100%保証します。
野澤:必ず点と点が繋がりますからね。
視聴者の方からも多くのコメントもいただきました。本日は本当にありがとうございました。
いかがでしたでしょうか。
正解がない中でも、自分で決めた道を信じ、正解をつくっていくという意志を持っていたいと強く感じる内容でした。
本セミナーの様子は、以下からYoutubeでもフル視聴することができます。
お時間ある方はぜひ当日の空気を肌で感じてみてください!
※1 計画された偶発性理論(英語: Planned Happenstance Theory)とは、スタンフォード大学のジョン・D・クランボルツ教授らが提案した考え方で、個人のキャリアの8割は、偶然の出来事によって決定されるという考え方。
※2 スティーブ・ジョブズ氏が、2005年に米スタンフォード大学の卒業式で行ったスピーチで語られた言葉。出来事や経験を点と見た時に、その点と点がいつか繋がるという意の言葉。